西村太志の研究紹介


主な研究テーマ

  1. 火山噴火のダイナミクスに関する研究
  2. 火山性地震・微動の発生過程に関する研究
  3. マントルや地殻の不均質構造に関する研究
  4. 地震計測器の開発

 

研究プロジェクト


主な研究テーマ

1.火山噴火のダイナミクスに関する研究

真っ赤な溶岩が噴出する有様や,爆発的な噴火は 地球が生きていることを実感できる固体地球の中の最も躍動的な現象です.この壮観な火山活動がどのような地下のマグマの運動により引き起こされているのかを知るために,地下マグマ性流体の力学プロセスを半直接的に測定できる唯一の情報源である地震波の特徴に基づき,モデリングを行っています.近年は,爆発的な噴火に伴う地震や噴火微動 の発生機構や規模が火口の大きさに強く依存するという考えを提案しています.また,マグマ性流体と弾性体の運動を数値シミュレーションにより調べ,爆発的噴火の力学プロセスを調べています.

 

. 火山性地震・微動の発生機構

火山地域では,いわゆる断層運動による「地震」と違い,マグマ自体が移動したり,振動し たりするなど,マグマが地震源の中心的役割を果たしていると考えられる地震(低周波地震,爆発地震,微動など) が,しばしば観測されます.これらの地震や微動は,噴火に先立って観測されたり,噴火のスタイルによって異なるタイプが発生することが広く知られており,噴火予知の実用化の上では非常に重要な情報源です.これらの地震波の情報から,火山下の力系(位置,時間,力の大きさ及びその時間変化)を明らかにし,地下マグマの運動の物理過程を明らかにすることを目指しています.

 

. 地殻・上部マントルの不均質構造

地球は,内核・外核・マントル・地殻など深さ方向の変化ばかりでなく,火山や断層,スラブなど水平方向にも ずいぶん変化しています.これらの構造は,長波長あるいは短波長で幅広く変化して(揺らいで)います.そこで,地震波の散乱波を解析することにより,短波長的な構造の揺らぎを調べています.アメリカ合衆国ニュー メキシコ州に位置する,コロラドプラトーというプレカンブリアンの古大陸,大規模陥没型カルデラの代表バイアス火山,そしてマントル上昇による地殻の裂け目であるリオグランデ地溝帯というテクトニクスが異なる地域を, 地震波形インバージョン法で測定し,3者の地殻構造の不均質性を明らかにしました.また,世界各地の長周期の波形記録を調べることにより,大陸下の上部マントルは水平成層構造的であるのに対し,島弧下ではマントルダイアピルやスラブなどによると考えられる水平方向の不均質性が強いことを指摘してきました.このような解析例は,まだ, 地球全体のほんの一部にしか適用されておらず,今後,日本の火山地域や異なる地域を解析し,地球の不均質 構造の詳細なイメージを明らかにすることを目指しています.

 

.地震計測器の開発

地球の構造や地震の発生機構をよりよく知るためには,より精度の良い器械を,より高密度に展開し,ノイズの 小さい高品質のデータを取得することが不可欠です.そのため,計測器は人工的なノイズの小さい人里離れた地 域に設置したり,火山では火口に近い山深いところに設置することも必要です.また,地球構造の正確な理解には, 日本だけでなく,テクトニクスの異なる世界中の興味深い地域に計測器を設置することも重要です.これらの地 域で比較的容易にそして迅速に観測が実施できるように,GPSを搭載した高刻時精度の小型データロガーの開発 を行ってきました.

 


現在進行形の研究プロジェクト

1.京都大学防災研究所 一般共同研究 「火山性地震・微動のデータベース作成と発生過程の比較研究」(H14-H15) 研究代表者

2.文部科学省 科学研究費補助金 基盤B 「地震発生前後の地殻構造の時間変化に関する観測的研究」(H13-H15) 研究代表者

3.科学技術振興事業団 計算科学技術活用型特定研究開発推進事業 地球・環境分野 「火山熱流体シミュレーションと環境予測手法の開発」(研究代表者:藤田英輔 防災科学技術研究所,H13-H16)研究協力者

 


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